Events
第10回『今宮純クロストーク・ミーティング』開催レポート

今回で通算10回目を迎える「今宮純クロストーク・ミーティング」のテーマは「徹底討論」です。世界同時不況に端を発したメーカーチームの相次ぐ撤退で、今後への不安を抱えたまま船出する2010年のF1。その一方で、帝王M・シューマッハの現役復帰や、念願の赤い跳ね馬で王座奪還に燃えるF・アロンソ、異次元の速さでチャンピオン候補に上り詰めたS・ベッテル、唯一の日本人ドライバーとしてフル参戦が楽しみな小林可夢偉など、レース中の給油禁止やポイントシステムの変更など、ルール改正によるレース展開やタイトル争いの変化とともに、ドライバーのラインナップも楽しみなシーズンとなっています。さらに今シーズンは3月から11月まで全19戦という長丁場。まさに何が起きても、どんな展開になっても不思議ではない、新たな時代に突入した2010シーズン。開幕を1週間後に控えた3月7日(日)、直前情報を惜しみなく紹介しながら、ファンの皆さん語り合いました。
日時:平成22年3月7日(日) 14:00〜16:30
会場:東京青山「ホテルフロラシオン青山」
参加者:192名 
主催:今宮純公式Webサイト『F1World.jp』
協賛:株式会社 ブリヂストン

□ 第一部 「2010年シーズン、F1はどう変わるか!?」〜給油禁止の影響から、チャンピオン争いの行方まで〜
      講師:今宮 純
撮影:池田まさあき
【講演内容一部抜粋】
crosstalk vol.10
■4人のWチャンピオンが揃った激闘のシーズン
60周年を迎えた今年のF1グランプリ、J・バトン、L・ハミルトン、F・アロンソ、M・シューマッハという歴代4人のワールドチャンピオンがコース上に揃うというのは1999年以来になります。しかも、それぞれにコンペティティブなチームのドライバーとしてチャンピオンシップを争う。これが今年の見どころ、特徴だと思います。タイトル争い言うと1974年に、5つのチームが最後までタイトルを争うという激闘のシーズンがありましたが、今シーズンもワールドチャンピオンを擁するマクラーレン、フェラーリ、メルセデスGP、そしてレッドブルの上位4チームが、最後までタイトル争いを演じると見て間違いないと思います。これまで最終戦決選というのは26回、そのうち3人のドライバーによる最終戦決選というのも8回ありましたが、今年はシーズンが全19戦と長いうえにポイント制度も変更になり優勝は25ポイントとなりました。その新しいポイント制度がタイトル争いにどんな影響を及ぼすか。チャンピオン争いという展望でいうと、今年は最終戦の3人のドライバーによる最終戦決選もあり得るのではないか。そうなると追う者の強みというものも出てきますので、その点も一つのファクターとして見ておいてもいいように思います。
■日本人ドライバー“開幕戦伝説”
中嶋悟選手をはじめこれまでの日本人ドライバーは、開幕戦では必ずといってもいいほどいい結果を残しています。特に中嶋悟選手は競争力のないマシンでも「リタイヤだけはしない」という気持ちの入ったレースをしてくれ、5年間の開幕戦は7位―6位―8位−6位−5位という結果を並べています。日本GP3位表彰台の鈴木亜久里選手も、同じく競争力のないマシンながら開幕戦は6位入賞。片山右京選手も5位入賞という結果を残していますし、中嶋一貴選手も6位に入っていますが、なぜか佐藤琢磨選手だけは9位というのがベストでした。今年の日本人ドライバーは小林可夢偉選手ひとりになってしまいましたが、開幕戦の日本記録は佐藤琢磨選手の予選7位、決勝は中嶋、片山選手の5位となっていますので、果たして彼が開幕戦でどこまでやってくれるか興味深いところです。
■今季注目ドのライバーはアロンソとシューマッハ
crosstalk vol.10
僕が今年注目しているドライバーは二人、F・アロンソとM・シューマッハです。なぜこの二人かというと、今年はテクニカルなレギュレーションはそれほど変わっていませんが、給油がなくなったということで競技形態が大きく変わりました。それをいかに理解し、上手に味方にして戦いを進めていくか。レースマネージメントということを考えると、この二人がフリー走行から決勝までどのように組み立てて戦っていくか、その仕事ぶりが大いに注目されるからです。これはドライバーが新しいチームに移ったときに最初に見る僕のポイントですが、そのドライバーがどれだけ前のチームのマシンと同じように一体感を醸し出しているか。アロンソで言えば、彼のドライビングポジションというのはコックピットに低く、低く沈み込んで、あれでよく前が見えるなというぐらい低いポジションを好む唯一のドライバーなのですが、今年のフェラーリのシートフィッティングの感覚が、2005年、2006年のルノー時代のようなマシンとの一体感がすでに出ています。これは、今年のやや特徴的なフェラーリのマシンに対して、彼が急速に馴染んでいっている証拠だろうなと僕は見ています。
 もう一方のシューマッハについては、今年のマシンが全長5m以上の長さで横幅は1.8mですから、車の縦横比でいえば後ろが長くなっています。ですから、高速コーナーはまずまずでもシケインのような低速の小さいコーナーでは、どれだけ俊敏に方向転換できるかが今シーズンのカギになります。それが現段階では、どのマシンもどうしても動きが鈍くなりがちなんですが、そんな中で彼だけは「やっぱりシューマッハだなあ〜!」という動きを見せてくれているんですね。その点だけを見ても、彼がどれだけやってくれるか楽しみにしていいと思います。
■速さはマクラーレンとレッドブル
スピードはマクラーレンとレッドブルで間違いないと思います。特にマクラーレンのL・ハミルトンは出てきたときからアグッレッシブでありながら、フロントタイヤを上手く使ってクイックターンに持ち込む、見ていて惚れ惚れするようなドライバーでした。それが昨年はKERS (運動エネルギー回生システム)が上手くいかないこともあって成績の上がらないシーズンとなりましたが、それでも後半はだんだんと彼のドライビングがモディファイされていくのが見えました。そして今年、フロントタイヤが狭くなってマシンの動きが変わった。それに対して、さすがに若くしてワールドチャンピオンなった逸材だと思わせたのは、タイヤに対する調整能力が彼のスピードに反映されて、最後のバルセロナテストではトップタイムをマークするまで仕上げてきた。マクラーレンは今年、リアウィングがレギュレーション違反ではないかとの指摘を受け、レッドブルがFIAに再審査を要求されという問題がありましたが、現状の流れでいけばおそらく合法と認められ、他のチームもすぐに用意をしてくるだろうと思われます。そうなると信頼性のマクラーレンとレッドブルですから、さらに状況は有利になるのではないでしょうか。
■ロシアに負けた佐藤琢磨選手
crosstalk vol.10
F1復帰を目指していた佐藤琢磨君ですが、最終的にアメリカのインディカーシリーズに参戦することになりました。冬の間彼が、ルノーとの交渉を地道に続けてきたことはご存じかと思いますが、ここへきてロシアの自動車メーカー「ラーダ」が、ルノーF1チームの2010年のスポンサーを務めることが決まりました。しかも、その提携を発表したのがロシアのプーチン首相という、まさにロシアの国家プロジェクトに匹敵するような大きな話が成立しました。これによって、ドライバーもビタリー・ペトロフが起用されることになり、残念ながら佐藤君はルノーのシートを得ることはできませんでしたが、結果的に僕はアメリカのインディーカーシリーズに決まったことは良かったことだと思っています。
仮にあのままF1にこだわり続けロータスのシートを得られたとしても、トップチームから6〜7秒も遅いマシンを与えられ、同じ日本人ドライバーということでザウバーの小林可夢偉君とも比較され「なんだ、琢磨はこんな位置なのか?」と言われるようでは、せっかくここまでやってきた、彼のF1ドライバーとしてのキャリアに、大げさに言えば傷を付けてしまうことにもなりかねないと思うからです。それよりも、彼がアメリカで走ることによって、これまでなかなか伝わってこなかったアメリカのモーターレーシングの面白さというものが、彼の活動によってどんどん入ってくるようになる。そういう意味でもいい決断だったのではないかと僕は思っています。
[1] [2] [3]
Index