Events
第9回『今宮純クロストーク・ミーティング』開催レポート

今年で60周年を迎えたF1世界選手権は、ニューフェイスのブラウンGPが開幕と同時に独走、これを新興のレッドブルが猛追するといった予想外(?)の展開で始まり、フェラーリ、マクラーレンという昨年までの2強を完全に押しやる「新2強時代」を築き始めています。その一方でコース外に目をやると2010年から導入される予算制限策を巡ってFIAとFOTAが対立。両者のバトルは権力抗争へと発展し、ファンの存在を無視した政争として迷走が続いています。ブラウン対レッドブル、J・バトン対S・ベッテルという新2強時代の幕開けをスポイルするかのような、コース外の権力抗争。果たしてF1ファンの目にはどう映っているのか。チャンピオンシップも中盤戦の山場を迎えるこの時期、ファン不在の政争問題について、いよいよ激しさを増す後半戦の展望や、3年ぶりの開催となる鈴鹿日本GPの見どころなどを大いに語り合いました。
日時:平成21年8月8日(土) 14:00〜16:30
会場:東京青山「ホテルフロラシオン青山」
参加者:190名 
主催:今宮純公式Webサイト『F1World.jp』
協賛:株式会社 ブリヂストン
□ 第一部 「2009年シーズン前・中盤戦報告」〜ファン不在、FIAvsFOTAの権力抗争に物申す〜
      講師:今宮 純
【講演内容一部抜粋】
crosstalk09
■まさに忘れた頃に…。最悪の事態は回避されたマッサの大事故
 ハンガリーGPの公式予選中に起きたF・マッサ(フェラーリ)の事故にはびっくりしました。
 中継映像では一瞬で何が起きたのか分かりませんでした。東京でリプレイしてくれたスローを見て、何か黒い物体が飛んできてマッサの頭部を直撃したことが分かりました。
 その時、改めて思ったのは99年のM・シューマッハーのシルバーストーンでの事故でした。あれから、ちょうど10年。まさに、忘れた頃にという言い方ができると思いますが、シューマッハーの場合はすぐに足の骨折というのが見て取れたのですが、マッサの場合は直後の情報もなく、事態はかなり深刻だなと思いました。が、幸いなことに最新の情報では、あの場にいた関係者が思っていた最悪の事態は回避され、いい方向に向かっているということが分かり安心しました。
 ただ、ダメージを受けたのが頭部ですから、快復までどの程度の期間を要するのか気になるところです。ブラジルに戻って日常生活のリハビリから始まり、F1ドライバーとしてのトレーニングができる体になるまでどのくらい時間がかかるか。第16戦ブラジルGPが彼の凱旋復活になることは、誰でも思い浮かぶ絵だと思いますが、そうなってくれると僕らも嬉しいですし、また話題いっぱいの終盤戦になると思います。
■3年ぶりの鈴鹿・日本GPにシューマッハーが戻ってくるか!?
 フェラーリとしては、マッサの代役として、ヨーロッパGPからM・シューマッハーの起用で動いていると思います。彼自身は今年2月にバイクのテスト中に事故を起こし、首にギブスを巻いて開幕前にやって来たというのは、前回も浜島さんからお話がありましたが、彼のことですから行く気になって戻ってくると思いますので、ベルギーGPまでの2連戦はシューマッハーが前提で間違いないと思います。
 その後はマッサの快復具合、コンディション次第になると思いますが、イタリアGPのモンツァは高速サーキットであると同時に、縁石を引っ掛けてのコーナリングが必要ですから、どのドライバーも脳震とう状態になるほど肉外的ストレスがある。続く第14戦のシンガポールGPはナイトレースで夜間照明の中をMAX350Km/hというレースに加えて、コースがかなりバンピーです。こうしたレース特性を考えると復帰直後のマッサには厳しいと思いますし、続く日本GPも日程がタイトで僕らでも大変なほどです。
 それらを考えると、3年ぶりに戻ってくる鈴鹿・日本GPに、再びあの人(シューマッハー)が帰ってくるというシナリオも、どこかで用意しておいたほうがいいと思います。
■佐藤琢磨選手の復帰・復活はあるのか
 M・シューマッハーが帰って来そうだということで「もう一人…」というのが日本中のF1ファンの切なる思いだと思います。佐藤琢磨選手がF1に乗れない理由について、能力的にどうのこうのというネガティブなものはないと思います。トロロッソでのテストランの時も,チームのエンジニアたちは、全てのデータを見て「タクマサトウしかいない」と言っていました。
 彼の今後について、今はまだはっきりしたことを言える状況ではありませんが、いざ鎌倉という時に備えて出陣の準備だけはしておいて欲しい。鎌倉はどこにあるか分かりませんから、体の準備とフランス語とスペイン語の準備だけはしておく必要はあると思っています。
■FIA対FOTAの権力抗争はF1ファンに何をもたらしたのか
crosstalk09
FIA(国際自動車連盟)のM・モズレー会長が、2010年度から4000万ポンド(約64億円)の予算制限を導入すると発表したことに端を発したFIAとFOTA(フォーミュラ1・チームズ・アソシエーション)の対立は、FOTAが来季はF1から離脱、新たな選手権を設立すると発表するなど、F1世界選手権がスタートして60年の今年、分裂の危機を迎える政争へと発展しました。
 結果的にはM・モズレー会長が今年のFIA会長に再出馬しないことを条件にFOTAがコンコルド協定にサインすることで一応の決着を見ましたが、ファン不在の政争はFIA会長M・モズレー体制の中で、FOMやFOAを核とするF1運営組織のCEOでF1界の支配者と言われるB・エクレストンと、FOTAのリーダーであるルカ・モンテゼモーロ(フェラーリ会長)が「この世界では誰が一番偉いのか」を確認し合った戦争だったと、僕は見ています。
 F1界の独裁者と言われるM・モズレーは、弁護士の傍らF・ウィリアムズのチームでF2に参戦し、その後はA・リースらと共同でマーチというフォーミュラカー・コンストラクターを設立してF1に参戦、主に法律や財務を担当していた人物です。その後、ブラバムのオーナーだったB・エクレストンとFOCA(F1製造者協会)の運営に携わり、法律顧問アドバイザーを務めるようになります。1977年にFISA(国際自動車スポーツ連盟)とFOCAの政治的対立が起こると調停役を務め、1981年のコンコルド協定の締結に貢献したことで、その後は世界モータースポーツ評議会役員を経て、1991年にはFISAの会長に就任するのですが、自動車の安全や環境問題に取り組むべきFISAが、1993年になぜかFIAに吸収されると、彼は三段跳びでFIA会長に就任し、全ての権力を握ることになります。以後1997年、2001年、2005年と4年ごとの改選にことごとく勝利し、今年5回目の改選を迎えることになっていました。
 7月には分裂危機を回避するために「5期目は出ない」と不出馬宣言したM・モズレーでしたが、その代わりに推薦したのがフェラーリのチームマネージャー(監督)だったJ・トッドでした。ところがチーム側はJ・トッドがフェラーリの人間だったことやM・モズレーと蜜月関係にあることから、院政を敷かれるのではと警戒しているのが現状です。
 この問題について僕は再三発言もし、原稿にもしましたが、結論からすればFIAを退いたM・モズレーはFISAをもう一度立ち上げ、そちらで安全問題や環境といった近未来の自動車の問題に一生懸命取り組むべきだと思っています。そしてFIAは、モータースポーツに関わってきた人々によって、より健全に運営して行く。そうすることで両者の立場が明確になりますから、F1分裂などという馬鹿げた権力抗争はなくなる。
ファン不在の政争など、何の意味もないことです。
■富士スピードウェイF1開催撤退の意味するもの。
 「継続は力なり」という言葉があります。しかし、ホンダ撤退に始まり、富士スピードウェイのF1開催撤退の問題は、言葉の意味が逆だと僕は思っています。結果が悪いから、力がないから継続できない。そう言うべきだったのではないでしょうか。
そういう意味で両者の撤退は、撤退ではなく敗退だと思います。例えば富士スピードウェイの場合は、250億円もかけて大改修をしておきながら、わずか2年で止めてしまったら、250億円をかけた意味がなくなることは、誰が考えても分かることです。隔年開催で10回開催しても20年はかかる大事業なのですから。彼らは経済情勢や宣伝効果云々を理由に挙げていますが、果たしてどれだけのファンがその言葉に納得しているでしょうか。
継続は力なりではなく、力がないから継続できない。結果が出せないから継続できない。それが今回の撤退劇の意味するところだったのではないでしょうか。しかし、引退した元チャンピオンが戻ってくる時代です。ホンダも富士スピードェイも、自分たちの判断がどうだったのかもう一度考え直して欲しい。なぜなら、モータースポーツこそファンの皆さんの、まさに継続は力なりのサポートによって支えられている文化なのですから。
[1] [2] [3]
Index