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2013年シーズン始動! 初回へレス・テスト詳細分析
〜フェラーリ&ザウバー&ロータスに注目〜
2013.02.15

 ニューマシンがウイリアムズを除きすべて出そろい、2月5日から4日間、今年最初のへレス・テストがほぼ安定したコンディションのもとで進んだ。まだシェイクダウン段階の合同テストだが僕が最も注目したのは、最速フェラーリ・マッサ1分17秒879からマクラーレン・バトン1分18秒861まで8チーム(!)がなんと“0,982秒差"の接戦ベストタイムを記録したことだ。

 1年前のこの時期のへレス・テストでは、最速メルセデス・ロズベルグ(旧型マシン)とロータスの2チームだけが“0,806秒差内"だった。つまりチーム接戦度は昨年の4倍とは言わないまでも、過去の例からして未曾有のコンペティティブな初回合同テストになっている。どのチームもドライバーも「いや、このテスト・タイムの順位にはあまり意味がない…」などと現場コメントでは濁している。それが内外メディアで“開幕前へレス情報"となって発信されたのだが、ここは多角的に分析して深読みしなければいけない。

 たとえば久々に初回テストを最速で終えたマッサは、1年前は全く言うことを聞かない(まっすぐ走れないほど?)最悪だったじゃじゃ馬F2012に比べ、今年のF138は“雲泥の差"だと本社のモンテゼモーロ社長にウキウキ気分で報告を入れている。正直なマッサならではの第一印象だ。

 フェラーリはマッサをこのへレスで完全復調させ、アロンソにはこの間に体調管理を最優先させてから、次のバルセロナ・テストにF318アップデート仕様を入れる。そこから“実戦モード"で開幕まで押し通すのが狙いと想像する。具体的にはまず一新されたエアロ・パッケージの確認をマッサが努め上げ、新加入したデ・ラ・ロサがシミュレーター・データと実走感覚を比較する。彼は長年マクラーレンで開発に参画していたから、そのテクニカル・ノウハウが今後のフェラーリにどしどし注入されるはず。へレスの最終日を彼に担当させたのは、その第一歩というわけだ。

 テストを見送ったアロンソには二人からダイレクトなフィードバックがあり、満を持して次回19日から22日のバルセロナ・テストに臨む(彼が初回テストを見送る行動をしたのは以前、A・セナがマクラーレン時代にとった動きに似ていて、それをご存じない方々がいろいろうがった見方をされているようだが)。

 さてチーム別周回数では1位ザウバー430周(昨年対比+132周!)が2位レッドブル372周、3位フォースインディア357周、4位ウイリアムズ333周、5位トロロッソ330周、6位メルセデス319周を断然リードしているが、この時期のテストではこの周回数に大いに注目する必要がある。ちなみに昨年のへレスではロータスが1位404周をカバー、スピードと信頼性をここからはっきり確認したライコネンは全20戦完走(1191周最多周回数記録)を果たしている。その予兆は最初のテストにはっきりと出ていたわけで、だからこそ初回へレス・テストといえどもシーズン展望をするうえで非常に意味があると言える。

 そのロータスが今年も2日間トップを占めた。ライコネン(実はコクピット居住性に神経質)はその感触にこだわりながら昨年より満足気分、周回数が少なかったのはリクエストが多くてその調整に時間を要したから。キミ流のやり方が2年目でチームに浸透したと受けとめられる。

 ザウバーはヒュルケンベルグとグティエレスに変わったせいもあり、二人とのコミュニケーションを構築すべく合計で430周も走り込ませた。信頼性はOK、ニューC32の特徴はさらに進化したエアロ・コンセプトで、これはへレスの高速コーナー区間で実証され、フォースインディアとの差異に彼は相当驚いていた。新人君のほうはまだタイヤを学び、ドライビングを向上させるのが目的、はっきり言って昨年までの小林とペレスのレベルには至っていない。チームとともにじっくり前半戦をこなしていく間は、当然ヒュルケンベルグがエースとしての存在を発揮していくだろう。

 その移籍したペレスはマクラーレン最初のテストでバトンに後れを取り、何もかもがザウバーとは違うために内心ショックを受けたようである。強気な性格の彼にしてはコメントがとても控えめ、チームから“メディア対応教育"を指導されてやや萎縮しているような気がする。ハミルトンが去って正真正銘マクラーレンの嫡男になったバトンは初日からスパート、昨年は初日8番手だったのに強烈なランでトップに。シェイクダウンはじっくり行くタイプの彼のこの“変身"ぶりは驚きで、新人に対する先制パンチの意味もある(いつも良い人のジェンソンではないのだ)。

 メルセデスでいきなり「ノーブレーキ・クラッシュ」の洗礼、ハミルトンはその瞬間何を思ったか――。信じられないのはこの時期だからこそシステムチェックを慎重にやらねばならないのに、その直後にブレーキ・コントロール不能の事態になった事実だ。チェックランで発覚せず(気づかず?)、そのまま走行開始させた直後のトラブル発生は全くチーム力を疑ってしまう。止まらないクルマほど恐ろしいものはない。マクラーレンとの違いを彼が体で実感したのは言うまでもない(骨折などせず本当によかった)。それでもハミルトンは最終日に145周してW04のダイナミック・ダウンフォースの弱さを実感、スタッフにガンガン注文を付けたのはプロフェッショナルだ。

 ロズベルグはその点おとなしいタイプで、シューマッハも以前のフェラーリ時代とは打って変わって穏やかでいたから、このチームがルイスの“マクラーレン流"のやり方にどこまでついていけるのか。R・ブラウン主導できた体制に新首脳陣が相次いで入り込み、元BARチームがはたして覚醒するのかどうかヒューマンファクターに注目していきたい。

 王者レッドブルはこのへレス・テストでとにかく“信頼性重視策"を貫き、ベッテルはニュー・ピレリタイヤ研究に専念。ソフトを履かずにハードでの5位ベストタイムは評価でき、昨年同時期にくらべるとRB9はとても完成度が高い。V3を達成した過去3年、彼らは常に攻めた設計からくる信頼性問題を内に抱えてきた。しかし今年はV4を目指すためには信頼性をまず“優先"するテスト戦略できたように思う。そしてこれから2回のバルセロナ・テストでパフォーマンスを引き上げるアップデートを積み重ねていき、本番までにビッグチームで最も仕様が変わるのがおそらくレッドブルだろう。

 へレス・テストのショート総括をする。タイムや周回数などのデータだけに惑わされずにトータル分析すると……。レッドブル、フェラーリ、ロータス、マクラーレン、ザウバー、メルセデス、フォースインディア、トロロッソという順列。旧車のウイリアムズは未知数で次回どのポジションに入るか、ケータハムとマルシアは新鋭ラインアップに変えたばかりで昨年の段階よりも総合戦力で見劣りする。コバライネン、グロックの“不在"は今シーズンの彼らの進路を左右する気がしてならない。  

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