Race Eye
アジア・ラウンド初戦シンガポールGPはタイトル争いの個性が滲み出た
2012.09.20

 12年シーズンのクライマックス、アジア・ラウンドが“獅子の都シンガポール”から始まった。ここから日本、韓国、インドと続く転戦、ヨーロッパの同業者から「近くていいな」とうらやましがられるスケジュールだ。そういわれてもEU圏内をちょこっと移動すればいい“ヨーロッパ・ラウンド”と違い、鈴鹿は自分の車で行けても韓国の木浦は近くて遠く(いろいろいま政治的にもめているし)、インドは文化的にはるか彼方。冒険の旅には面白そうでも、この国で個人仕事をするにはなにかとプレッシャーが多い。

 シンガポールGPはアジア戦のなかでは好きなほうに属する。チャンギ空港から近く、レンタカーを借りずマリーナ・ベイ・ストリートサーキットにはホテルから徒歩で通うことにしている。レンタカー代を削った分をホテル代にあてて、かなりいつもよりお高くなるのだが“時短”と“距離短”を優先してそこはがまん(なんとフェラーリ・チームが同宿だった!)。歩いて行けるだけでなくホテル周りにはショッピングモールがいっぱい、あの“パルコ(開店2周年)”が目の前に。そのなかには日本の人気ラーメン店が2軒、洋食屋が1軒、それとわが町にもある新宿某Sボテン・トンカツ屋も入っている。チェーン海外展開の1号店だとかで、頻繁に通った。ナイトレース・タイムスケジュールに合わせ早朝に寝て午後過ぎに起きる“不健康生活”のうえ、1日の1食目からトンカツ系を食らうのはいかがなものだろう。でもキャベツをおかわりし味噌汁も飲んで、ごはんもたらふく食べて、ウーロン茶とカツサンドをテイクアウトで頼んで、こんなことは鈴鹿・日本GPでもできない。

 参考までに紹介すると、空港からのタクシー代は通常料金25ドル(シンガポール$)、ラーメン代は約15ドル、ヒレカツ定食は20ドル以下で、ヨーロッパのなんちゃって日本料理屋よりはるかにリーズナブルで、国内値段とほぼ一緒。コンビニ店もいたるところにあるし、僕は行かなかったが(小林君は行った)牛丼Y野屋だってサーキットそばにある。その気になれば1泊2日“弾丸ツアー的”な観戦も可能なので、日本GP前哨戦を楽しむにはベスト。来年どこか海外観戦をと思っている方にはまずシンガポールGPから、とお勧めする。

 旅話はこれくらいにしてレースへ。個人的な印象としてシンガポールGPでいちばん頑張ったのはセーフティーカーだ。メルセデスのSLS・AMG・GTスペシャルバージョンは今回からニューモデル、6,2リッターV8エンジンは591PSでF1の20%落ちでしかない。最高速320km/hはもしかするとHRTより速いかも(これは冗談)。過去4年連続出動してきた“SC”は今年もたびたびスタンバイして大忙し、F1だけでなくサポートレースでも活躍した。フェラーリ・チャレンジやポルシェ・カップでは競技車両よりペースが速く、ついていけないアマチュア・ドライバーも。この“SC”最速ラップは41周目の2分40秒476、カーティケヤンの自己ベストラップと40秒差はすごい(!!)。

 いつも木曜に“SC”とメディカルカーが本番を想定したリハーサル走行をする。それを見ていて僕は実に彼らはプロフェッショナルだなあとおそれいった。1周目から即全開、手探りの走りではなくメディカルカーはハミルトンみたいにコンクリートウォールに当たる寸前でコントロール。路面はダーティー、グリップなど期待できない状態、それでも本番にそなえてこの限られた時間(60分)にプラクティスを真剣に重ねる彼らには敬意を表する。もし“SC”が先導中にスピンしたら、メディカルカーがクラッシュしたら・・・、レースはぶち壊しとなり未曾有の大混乱におちいるだろう。

 その“SC”ラップあけの再スタートにおいてまたまたベッテルがトリッキーな動きをとり、直後のバトン、アロンソらが混乱しかけた。彼はいままでにもこうした例があり、リードカーに許される権利と責任をよく理解していない部分が見られる。アクセルオンの駆け引きタイミングは再スタート時の巧妙なテクニックだが、ベッテルはペナルティーすれすれの行動をとるケースが多い。これはチーム側も注意しておいたほうがいいだろう。タイトル争いで2位浮上しただけに、つまらぬペナルティーは自分で自分の首を絞めることになりかねない。

 首位アロンソ194点、2位ベッテル165点(−29)、3位ライコネン149点(−45)、4位ハミルトン142点(−52)。既にイタリアGPでバトンが堕ち、ここでウェバーも落ちたとみていい。4人に絞り込まれたアジア・ラウンド、四者四様の個性的“レース・キャラ”が滲み出る。
自己目標を設定し何が何でも達成していくアロンソ。もう勝つことだけしか眼中にないベッテル。無欲を装い飄々と自分の走りに集中するライコネン。常に最速でないと気が済まないハミルトン。それぞれフェラーリ、レッドブル、ロータス、マクラーレンの4人のエース対決に絞り込まれた12年シーズン。序盤戦は「7戦7人勝者誕生」が話題になり、中盤戦は首位アロンソが堅持していき、終盤戦は2番手の者がリタイアするパターンが続き、ここまで進んできた。
鈴鹿・日本GPでこの4人の中から抜けきる者が現れるか、落伍者が出るか、それともさらなる横一線状のチャンピオンシップ・バトルラインとなるか──。

P.S.
後日、日本GP直前プレビューをお届けする予定、こうご期待!

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