Race Eye
初秋のメルボルンから、スコールのセパンへ。開幕2連戦を振り返る
2013.4.5

 秋到来のメルボルン、スコールの日々が続いたセパン、開幕ダブルヘッダーを終え帰ってきたら既に東京の桜は満開を迎えたあとだった。昨年は戻ってから近所でお花見もできたのに、今年はスピーディーな展開の3月となったよう。遅ればせながら13年開幕2戦の総括を。

 まずレッドブル。マレーシアGPで起きた“チーム内騒動"にオーダーを破ったベッテルは謝罪し、首脳陣はお約束の文言で「ウェバーと我々は理解し合っている」と鎮静化に努めた。しかしあの46周目にとったベッテルの行動に、僕は二つの内包するファクターを感じとった。

 一つは13年ピレリでめいっぱい攻めて走るとタイヤを責めすぎてしまう、ダイナミック・ダウンフォースが強大なRB9のジレンマだ。ベッテルにすればそのストレスが初戦から鬱積、第2戦はウェバーのハード重視と異なるミディアム重視策でセットアップ。そのとっておきのミディアムを42周目に装着した彼にすればここから勝負、残り14周のラストスパート・レースにアドレナリンもりもり(!)。第2スティントをこれで17周もカバーしてきたのだからめいっぱい行ける、いや行くぞ。鬱憤をはらすときがきた(!!)。で、ああなっていった。

 もう一つのファクター、それはレッドブルの戦術(戦略ではない)が複雑に絡んでいる。彼らはご存じのように先行逃げ切りパターンが得意で予選で前方を奪い、序盤からプッシュし主導権を獲ろうとする。そのとき、具体的に言うと巧妙なエキゾースト・マップを駆使、燃費マイナスを気にせずハイペースで飛ばす。ずっとマイナスでいき中盤までにポジションを固め上げ、そこからプラス方向にシフトすべくペースを抑える。

 ウェバーは42周目からそうして、43周目ピットインラップも44周目ピットアウトラップもそうしていた。レッドブル軍のこれは『掟』である。話題になった言葉“マルチなんとか"の指示うんぬんではなく、急に発令されたチームオーダーでもなくてこれは彼らの間にある『掟』。だからこそウェバーは『掟破り』の若者をあれ程怒った――。

 ここでひっかかるのはウェバーの燃費マイナス度合とベッテルのそれがどう推移していたのかだ。もしあのレース中にベッテルがずっと我慢してセーブできていて、マイナスでなかったとしたら・・・・。46周目に抜かずともゴールまでに順位が変わった可能性もありえた。この燃費リアルデータは『軍の秘密』、不明だがルノーのレッドブル担当エンジニアは常にそれをことさら意識している。

 燃費マイナス戦術を常套手段に常勝V3を誇ってきた彼ら。マレーシアGPのように後続を二人が断ち切った時、セブの心にもマークの心にもゴングが鳴る。今後この戦術を微修正するか、しないならもう一度『軍の掟』を部下と兵士全員に徹底させなければいけない。それをするのは誰か、ピットウオールで貧乏ゆすりをなさる“あのお方"しかいない。A・ニューウェイ氏は采配権に口出しせず、アドバイザーの“博士"に肩書上その権利はないはずだから。

 開幕ライコネンの鮮やか2回ストップ作戦、ロータス・チームは「もっと速く走れた」と自信ありげに言い切った。アルバートパーク・コース特性への合わせこみ、13年ピレリの理解度もさることながら、最も大きな変化は昔のベネトン・シューマッハ時代やルノー・アロンソ時代のように、エンストン・チームがライコネンを明確にエースに立ててきたこと。

 「グロジャンが今年は慎重におとなしくなった」と見られているがそうではない。彼はいっときのアロンソとピケ・ジュニアのNO,2関係にまわったということだ。セパンを歩いているときにある日本のファンの方に声をかけられた。「ボクみたいなグロジャン・ファンもいますからね」と。自分としては彼が個人的に嫌いなわけでは全くなく、むしろ今年のいまの立場でガンバッテと見ている。タイトル・スポンサーが無いロータスはなんとしても序盤に結果を出し、ポテンシャル・スポンサー各位に“プレゼン"しなければ、今後資金面がネックになってタイトル戦線に加われなくなる。キミをエースに行くしかなく、ライコネン自身も十分に自覚している。

 第2戦の2コーナーでのアロンソ接触追突は見切りの巧い彼だけに驚いた(彼が言うように、何度VTRを見てもベッテルの動きは一瞬鈍っている)。もしあの接触箇所がフロントウイング中央部分でなく、左右にずれていたら片側翼端板のダメージですみ走行続行もできたかもしれない。だがあの損傷ではウイングごと脱落するのは時間の問題、惜しまれる判断であった。

 フェラーリF138の戦力は開幕前から指摘しているように、アップシフトのロスが無くなり高まった。コース脇で聴いているとギアシフト音が昨年と全く違う(!)。ダウンシフト時など、イヤープラグをしていても耳に激しく響いてくる。ベッテルとの絡みが無ければセパン3位は確実であり、燃費問題が終盤レッドブルとメルセデス勢に起きていただけにそれ以上いけたかも。蒸し暑いパドックにヘルメットも脱がずに戻って来たアロンソ、感情を懸命に兜の中でこらえていた。

 ダブルDRSゾーンで見せたメルセデス勢の“強さ"、これは予想していた以上だった。KERSバッテリー開発で大進化した今年、その恩恵をフォースインディアもうけていて、彼らも速くなっている(さっそく第2戦後に長期契約発表)。だがハミルトンとロズベルグの間で燃費問題からくる“順位操作"がR・ブラウンによって行われた。以前から実戦レース燃費問題が頻発してきた彼らだが、移籍したばかりのルイスのほうがどうもまだマイナス傾向が強いようだ。アクセルワークやマップ・コントロールなど、しだいにアレンジしていくとみられるが。

 ザウバーのヒュルケンベルグ開幕戦をDNS、燃料タンク内で発生した不具合にはさまざまな要因が重なっていた(という)。これは先日の第17回クロストーク・イベント会場でも少し話題にしたテーマで、たどっていくと給油装置の問題にいきあたる。ひしめく中間チーム勢ではフォースインディアが抜け出しつつある。アップデートより“ありもの"を巧みに組み合わせたセットアップと、タイヤ理解度によって前進中。

 ところで「雨のスーティル」が相当苦戦しているように、今年のピレリは晴雨タイヤの特性変化が今までよりも大きい気がする。彼が濡れ場で“慎重運転"にならざるを得ないのは相当なこと(弱オーバーステアでもニュートラルのスーティルなので)。開幕失速のウイリアムズは排気流周辺レイアウトの課題が発覚、その影響でダウンフォース変位幅がコーナー入り口と出口で激変すしマルドナードは「操縦不能」とこぼす。

 新人ボッタスも開幕から大苦戦中で、前から僕も注目してきたビアンキのマルシアに追っかけられている。GP2時代の粗さが消えたビアンキには01年ミナルディ時代のアロンソに似た動きを感じる。それは後続車に譲らざるを得ないマルシアで実に機敏に、無駄なく、ラインを切り替える能力だ。360度視野が広いからできるこのプレーは才能であり、速いマシンを与えられた時に抜かれる技が抜く技に変わる。10年も昔に見たフリー走行中のミナルディとマルシアの彼が僕にはよく似て見える。

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