Race Eye
4月の2連戦、「異常事態」を冷静に乗り切ったライコネンとアロンソの技量に感動!
2013.4.30

 4月2連戦の中国GPとバーレーンGPでは、2位ライコネンと8位アロンソにめったに見られぬ“事象"がレース中に起きた。あらためてまずこれから「事後解説」してみたい。

 第3戦中国GP16周目、ライコネンはペレスを抜こうとしてヒットされた。明らかにペレスはミラーでロータスの存在を見失っていた。このアウト側からのアタックはライコネンらしく、それを視界にとらえきれなかった新鋭とは格の違いだ。しかし避けきれず接触。とっさにエスケープに逃げてスピンアウトやクラッシュを免れた危機回避能力はさすが。だが彼のロータスは右側フロントウイング(垂直板)とノーズ先端部分を破損、TV画面でもお分かりいただけただろう。

 想像してもらいたい。こんなアンバランスな状態できっちりマシン・コントロールを続け、2位を守り抜いたドライビングはまさに“ファインプレー"。専門誌上で特集される微細なエアロパーツ・アップデートの数々、「すごいことをやっているエフワン」と思われるだろうが、それらが全くメチャメチャになり、“狂った空力"でもライコネンは危なげない走行をキープ。後にチーム関係者は「1周あたり0,25秒失っていた」と数値的な分析をしているが、極端なアンダーステアと格闘しながらも無線で文句も言わず、黙々とミッションを全うするドライバー力に久しぶりに感動した(あの破損状態を再現風洞実験すればいかにスゴイことか、スーパーコンピューターがはじき出してくれよう)。

 申し訳ないがグロジャンにはできまい。いやベッテルでもどうだったか。中国GPにおけるライコネンの全周回オンボード映像が公開されれば彼の技、闘志までもが一目瞭然だ。世界中のファンはこういうレースシーンを見たいのではなかろうか。「主役がタイヤ」で「脇役は戦略」、否定はしないけれど現代F1でもこういうたまさかの瞬間に人の力、技量が発揮される。これを見逃さずにフォローしていくのが我々の視点だと、自分はまた勉強させられた。

 次のバーレーンGPではアロンソが絶妙のプレーを見せた。原因追及はともかく事象として突然リア・ウイングDRS機構にトラブルが生じ、フラップがねじれてまった。これは重大な事態。ファクトリーのエアロダイナミシストたちは“悲鳴"を上げたことだろう。完全にリアのダイナミック・ダウンフォースが狂ったままとなり、アロンソはすぐ「リア・タイヤ異常(パンク?)」と察知。これはテレメトリー・データなどによってピット側も分かったはず。

 ところがピットに入った後、チームは“応急処置"でそのフラップを叩き戻しただけ。まあこれも一概には責められない。時間をかけて点検する余裕はレース進行中にはないのだから。想像していただければ分かるように、最高速時にあの曲がったフラップには強烈な下向き荷重がかかる。それによって構造破壊が瞬間に起きたらマシンは"暴走"する。アロンソはそのリスクを察知、再びピットに戻る間にチームは「これ以上DRSを使用しなければ走行可能」と判断、彼は従った。11年に導入されてから初めて起きたトップチームの“DRS異常事態"に、アロンソは冷静に対応した。

 レースはぶち壊し、ほとんどビリに落ちたがその後もDRS無しのまま抜いていった。スリップストリームを駆使して食い下がり、直線速度が劣るのでコーナーで攻めていたアロンソ。ちなみにこのバーレーンGP最速ラップはベッテルの1分36秒961、8位入賞に終わったアロンソは1分37秒204で3位タイムを記録。このタイム差を解析し、レッドブルとの差異をフェラーリは研究すべきだろう。DRS無しの空力シミュレーション・テスト(?)、彼1台だけが3年前の“10年規定"にタイムスリップしながら戦ったのだから。

 ランキング1位ベッテル、2位ライコネン、3位ハミルトン、4位アロンソ、5位ウェバーで開幕ラウンド4戦終了。首位ベッテルは昨年より24点増、ライコネンは33点増、ハミルトンは1点増、アロンソは4点増となっている。

 もう一人のチャンピオン、バトンは10位13点でなんと30点減、マクラーレンMP4−28の不振によって後退したままだ。バーレーンGPではペレスとの攻防に感情をむき出しにしたバトン。あの背景にはペレスを長年支援してきたカルロス・スリム氏(世界一の大富豪)が、直々に観戦に来ていたことが関係している。ペレスにすれば目の前で頑張ってみせねばならない。またチーム側にすれば、スリム氏がいるところで「バトン先行」のチームオーダーは出しにくい。現在のタイトル・スポンサー、ボーダフォンは今年までで14年以降は新規スポンサー体制となる。当然そこにスリム氏の“メキシカン・マネー"が関与する。ウイットマーシュ代表がチームオーダーを否定し、今後もバトンとペレスをフリーに戦わせる姿勢を見せるのも、来季チーム財政を考えてのこと……。

 そのマクラーレンを開幕から僕は注目してきている。このスランプは2004年にも匹敵し、あのシーズンMP4−19で前半戦苦しんだ彼らは後半に“MP4−19B"を新開発投入。当時在籍中だったA・ニューウェイTDが現場に来ないでそれに専念、ようやく7月第10戦フランスGPに間に合わせた。次のイギリスGPでライコネンがPP&2位、第14戦ベルギーGPで優勝、名門の底力を見せた。

 今のMP4−28がいつ、どこで、どうやって挽回に転じるか。04年にはシーズン中にテスト走行できたがそれはルールで禁止、時間との闘いである。5月ヨーロッパラウンドに“28B"を送り込めるか、段階を追ってアップグレードを進めてきたマクラーレンだけに第5戦スペインGPが見ものだ。

 さて今シーズンにデビューしてきたルーキー5人の開幕ラウンドについて。やはりいくつかアクシデントの引き金を引いたり、混乱のきっかけを作る場面があった。4戦でまだセーフティーカー導入はないものの、今後彼らが知っているコースになって無理をし始めると、その可能性も高まるのではないか。

 5人のなかではボッタスが不調ウイリアムズながら4戦とも完走、ベスト11位は善戦と言える。難しいマシン状態でも新人らしからぬコントロールを見せる。マルシアのビアンキはレース自己ベストタイムが速く、初戦ではベッテル、第2戦ではライコネン、第3戦ではペレスの次に相当するタイムだった(!)。TV画面にはあまり映らないがこの自己ベストを僕は評価する。これはマルシアMR02のポテンシャル以上のものをビアンキが引き出しているからにほかならない。

 最後に付け加えるとそのマルシアもケータハムも4戦を100%完走、これは中間チームを上回り“チーム力レベル"は昨年よりもアップしている。とはいえウイリアムズでさえ無得点の現状は厳しい。両チーム互いの争いを続けながら、ビアンキがサバイバルレースになった時に入賞まであと何台の位置にくるか、ちょっとした期待感はある。

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