Race Eye
伝統のモナコGPはメルセデスとロズベルグのためのレースだった!?
2013.6.03

 メルセデスとロズベルグによる、メルセデスとロズベルグのための第6戦モナコGPだった。木曜フリー走行から日曜決勝78周レースを、コース上において彼らは完璧に進めた。後にパドックで“直前ピレリ・テスト問題"が発覚し大騒ぎとなったが、それとこの完全勝利は切り離してとらえるべきだと僕は思う。

 各セッションすべてトップタイム、ここモナコではとても珍しいことだ。最近記憶にあるのは、04年にM・シューマッハが木、土曜ともにオールトップにいたが、当時の“2回予選制"で4位へ(PPはJ・トゥルーリ)、レースはアクシデントでリタイアしている。

 ロズベルグは小雨模様のQ1とQ2を8位と3位で通過するだけにとどめ、Q3ではベッテルが持つレコードタイムに迫るPPを決めた。2位L・ハミルトンに対しセクター1で0,2秒も圧倒、海沿いセクターではラップをまとめる走りを見せ、極上の1周を完成。このPPラップで見せたセクターごとの“ペース配分"は巧みで技あり、よほど自信があったのだろう。逆に言うとハミルトンはセクター2と3を限界まで攻めながらも敗れ、潔く負けを認めた。これで両者予選結果は“3勝3敗"のイーブン。

 ドライバーズ・サーキットと言われる伝統のモナコ。単純に言うと毎年ここで現役メンバー(22人)の資質が初めて露呈される。玉石混淆の13年ドライバーたち、他ではマシン(道具)に助けられたまたま上位に残れても、モナコはそうはいかない。開幕前から予想していたことだがアクシデントやクラッシュが頻発、起こるべくして起きた。

 毎日3度もクラッシュ、レース中には追突事故を犯したR・グロジャン。余談だがニース空港に到着したらゲート前にトタル・スポンサーの「笑うグロジャン・ポスター」が今年もデカデカと飾られてあった(フランス人であるの彼のホームGPだから)。これを空路モナコ入りするF1関係者はもちろん、カンヌ映画祭VIPたちも必ず見るわけだ。スター扱いのグロジャン、トタル社もフランスGPが無い今、彼のモナコGPは重点レースだ。

 有名人“オジャン・グロジャン君(失礼)"は、このスポーツに潜むリスクなどまったく怖れてはいないのだろう。いつか自分あるいは相手、ましてや観客を傷つける事態になるかもしれないことを知るべきではないか。車間距離を見きれず高速のまま前車にぶつかる事故の真因をチームは、“テレメトリーデータ"を見れば分かるはずだ。

 今回は昨年のスパ・フランコルシャン事故よりもっと深刻な事象で、現在はハーバー・シケインに安全避難地帯が広く設けられているからよいようなものの、以前のままなら彼もD・リカルドもどうなっていたことか・・・。ああいう追突はグランプリではありえない。トロロッソのペースが遅いなら左右どちらかにラインをとり、減速タイミングを見極めるのが鉄則。まっしぐらにドカンとぶつかるなんて信じられない。

 ここでは11年に新人S・ペレスが大事故を起こし、次のカナダGPを欠場し、そのあとも夏まで後遺症に苦しんだ。その彼が果敢にトンネル出口からシケイン・インに飛び込むプレーを再三演じた。勇敢ではあるが強引だ。チームメイトなのでバトンはあっさり行かせてやり、チャンピオンシップを優先するアロンソも衝突を避けようとシケインをカットして逃げた。

 これを「ペナルティー対象だ!」と無線でアピールし、認めさせると次に彼はライコネンの“ふところ"にまた飛び込んでいった。どう見てもアレは止まりきれない減速アクション。チームがテレメトリーデータでその速度やステアリング角度などをチェックすれば理解できるはずだ。若い彼らをグランプリ・ドライバーとして育て、指導し、さらに成長させるのはチーム首脳陣の努め。彼らだけを責めるのではなく、経験豊富なチーム側にも彼らを“コーチング"する努力を促したい。素質はある二人だけにそれを期待したいけれど現在のロータスとマクラーレンに諭すことのできる人物がいるのかというと・・・?

 タバコ屋コーナーで起きた事故も不幸中の幸いだった。新人M・チルトンは接近戦になると視野が狭くなるタイプ、開幕戦からずっとそれは感じていた。あの“2車線"あるかないか程度の狭い曲がり角で、P・マルドナルドがいるにもかかわらず突っ込むラインはモナコのレースではありえない(!)。今はここにもタイヤバリヤーなど衝撃吸収施設があるからなんとか物損事故程度で済んだ。以前はTVカメラマンやコースマーシャルもたくさんいたところ、赤旗中断によってレース進行できたのは不幸中の幸いと言わざるを得ない。

 今年のモナコは危機一髪、無事に終わったのは主催者側に豊富な経験や知見、長年にわたる努力があったからこそ。オートモービル・クラブ・モナコ(ACM)71回開催尽力の賜物だとあらためてこのコラムで言っておきたい。

 今年のモナコGP、技能賞はヘアピンでオーバーテイクを演じ5位入賞のA・スーティル。殊勲賞は予選10位から8位入賞のJ―E・ベルニュ。敢闘賞はペレスに当てられながらもピットイン後、16位から10位入賞したライコネン。国際TV映像はなかったが“ごぼう抜き"シーンを見せ、23戦連続入賞。シューマッハの最多24戦記録にあと一つ、新鋭たちと格の違いを感じた人も多いだろう。

 あえて言うとキミだってデビューしたての頃にはベテランたちに強引に仕掛け、失敗しながら学んでいきタイトルを制するドライバーに成長した。「愛のむち」ではないがペレスをギリギリでブロック、「ただでは済まないぞ」と教えたシケインのあのリアクションプレーは、いまどきの新鋭に諭すような行動に思えた。

 赤旗中断を含み2時間17分オーバーの78周レースで、チェッカーを受けた15台が全車同ラップ・フィニッシュ(16位ペレスは完走扱いDNF)。これも珍しい。ウイナー・ロズベルグが戦略遂行のために安全第一、タイヤが壊れぬように努めてゆっくりと走ったからだ。何年もモナコGPをご覧になっている方はF1というよりも、GP2ペースのようにも感じたことだろう。しかしこれが今の公式タイヤではマスト(必須)、それをメルセデスはモナコ前の三日間“極秘テスト?"で完全に把握し知ったのである。

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