Race Eye
スパとモンザを完全制圧したレッドブル。移籍発表でもフェラーリに勝利!
2013.9.19

 まずはライコネンの「14年フェラーリ契約発表」から。
これでマッサ8年間のご奉公が終わったことになる。マネージメントを努めてきたN・トッド(父親はJ・トッド現FIA会長)と、フェラーリとの長き関係にも遂にピリオドが打たれた。個人的にはこれに驚く。

 シューマッハ時代から父トッドは監督として、それ以上の権力を握りチームに君臨、そこに後継ぎのように息子トッドが入り込み、毎年“解雇話”が出ていたマッサのシートを確保してきた。成績結果だけで言うなら(申し訳ないが)マッサはもっと早くに交代させられていただろう。しかし強大なる「トッド親子パワー」によって継続、その都度ディープな交渉によって地位を保ってきた。

 何が何でもライコネンが欲しかったのなら、フェラーリはもっと早く(昨年末に)動いていただろう。超・政治的解釈をするなら、トッド親子のパワーをカットしたいフェラーリ側が、その見込みが立つまで“当て馬?”としてヒュルケンベルグの噂を容認するなど、ライコネンのマネージメント側を待機させた。一時は「レッドブル入り」の噂が広まったが、もとからここに行く気持ちはキミにはなかったと思う。待機交渉はおそらく“月単位”で延長され、延ばしながらようやくクリアーになって一気に契約締結へ──。

 マッサの14年に関してはザウバーという噂がある。だがこれには「?」マークがつく。トッド親子パワーが衰退気味である今、フェラーリ・エンジンがザウバーに行くとしても(未だ正式発表はない)、そこに本社からの支援が付随するとは考えにくいからだ。ザウバーは深刻な財政問題を抱えており、ロシアの新人抜擢によって活路を開き、メキシコからのグティエレス支援もなくてはならない情勢だ。マッサのギャラを支払う余裕はない。彼自身とトッド息子がビッグスポンサーを新規開拓しないことには難しい。

 ロータス行きの線も一部ニュースになっているが、これはトッド息子がリークしたのだろう。やはりこのチームも言われている以上に財政面で苦しく、ルノー側もグロジャンをサポートするので精いっぱい。前から名前が出てきているマルドナルドのほうが選択肢としてロータスにとっては現実的、彼にはベネズエラがついている。

 こうして見回すとマッサの居場所はあるようでなく、15PP、11勝の勲章も輝きが鈍る。頼みはブラジルからの何らかのサポート、「この南米大国出身のドライバーが(F1には)必要だ」とB・エクレストン氏も公言している(しかしボスはメキシコやロシア絡みでも同じことを言う・・・)。

 ライコネンとマッサの異動劇の前に、レッドブルはリカルドとの14年契約を9月2日に明らかにした。この日夜遅くリリース発表されたタイミングをかんぐると、既に内定していたものをあえてイタリアGP開幕週の火曜日夜にぶつけ、モンザでの話題を自分たちに引き寄せる情報戦略だったと思われる。このニュースは水曜日の朝から世界中を飛びかい、木曜日にリカルドが姿を現せば彼にメディアが殺到する。結果、フェラーリは地元なのにわきに追いやられ、現に木曜日のパドックはそうなった(ついでにウェバーの“送別会”も木曜日の夕方盛大に開催された)。
この一連の動きはさすが飲料メーカー、PR戦術がお上手と言うほかない。

 夏の第18回クロストーク・イベントでも申し上げたように、レッドブルとライコネンは水と油で融合しないのはみえみえだった。以前彼はフェラーリ時代にもトッド監督とそりが合わず、アロンソの加入によってチームを離脱した経験がある。レッドブルには似たように政治ごとが大好きなチーム・アドバイザーのH・マルコ氏がいる。

 ニューウェイは彼といっしょにやってみたかったはずだ。また現場もそうであったとしても、レッドブル&トロロッソを抱え、このスポーツに新風を吹き込んだレッドブル・レーシングとしては、子飼いの新鋭を“内部昇格”させる路線が、進むべき道筋と考えており、最長2年契約に固執したライコネン・マネージメント側の要求に、たぶん気位の高いマルコ氏が怒ったことは容易に察しがつく。

 成長著しいリカルド、ピッタリのタイミングで移籍が叶った。1年前後でもよくなくていまが最適。というのも14年にF1大改革を控え、開発ワークなどシミュレーターでのドライバー業務も増え、レース以外でも相当忙しくなる。今までウェバーが担当していた以上に新しいNO.2には働いてもらわないといけない。リカルドなら「今すぐファクトリーに来い」と言われれば、「ハイ、1時間で飛んでいきます!」と答えるだろう。オージーの彼は移動を厭わず、LCC系フライト・エコノミークラスでも平気、メカニック連中にも人懐っこいからすぐに溶けこめる。

 余談だがリカルドが愛する動物は「蜜アナグマ」、世界一恐れを知らないアニマルだそう(詳しくはWEBで調べて下さい)。4連覇を目指すベッテルが相手でも“恐れない?”、これは聞いてびっくりのエピソードだ。

 スパとモンザ、異なるタイプの両コースを完全制圧したレッドブル・ルノー。イタリアGPはこれまで“苦手”と見られていたが、彼らはセッティング手法を大きく変え、それに成功した。

 「モンザは“ロー・ダウンフォース仕様”」とよく言われる。高速レイアウトに見合ったロー・ドラッグ仕様が求められ、ピーク・ダウンフォースではなくダイナミック・ダウンフォースがキーとなる。低速シケインや中速レズモ、アスカリ複合コーナー、パラボリカなどマシン速度や姿勢変化幅が大きい部分での“動的なダウンフォース”が重要という意味である。モンザのコースサイドで見たレッドブルは従来のピーク・ダウンフォース追求姿勢を改め、よりダイナミック・ダウンフォース志向に振っていた。MAXスピード、セクタースピードともによく伸び、コーナリングスピードは抜群のまま(!)ロー・ダウンフォースを実現していた。

 急減速時のマシン安定性、ダウンフォースが抜け気味になるときにこれがものを言う。レッドブルRB9以外ではザウバーC32、トロロッソSTR8もこの領域における“自己ベスト・セットアップ”を構築できていた。逆にメルセデスW04とフォースインディアVJM06は大きく外してしまい、フェラーリF138とロータスE21は日々のコンディション変動にもう一歩対応しきれていなかった。

マシン順位では1位レッドブル、2位フェラーリ、3位ザウバー、4位メルセデス、5位トロロッソ、6位ロータス、7位マクラーレン・・・。

 ヨーロッパラウンドが終わり、これからはシンガポールGP、韓国GP、そして日本GPと続く。個人的にはレッドブル優勢にあると思うがモンザのようにライバルに大差をつけることは難しいだろう。その理由は“ロー・ドラッグ仕様”タイプのコースではないからだ──。

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