Race Eye
26歳のベッテル、進化し続けV4達成! 60年ぶりの最多連勝記録達成も成るか!
2013.11.12

 祝ベッテルV4──。2010年からの4連覇はいずれも決め方が違い、そこに進化し続ける26歳のセバスチャンの『ドライバー像』が透けて見える。

 2010年のV1は無我夢中。最終戦アブダビGPを前にアロンソ〜ウェバー〜ベッテルは3位だったがフェラーリ陣営の戦略失敗があり、PPから突っ走って優勝、4点差で逆転。
 2011年のV2は独走まっしぐら。早々に第15戦日本GPで戴冠、年間15PP新記録、年間11勝は2番目の記録、シーズン最多392点を獲得。
 2012年のV3はプレッシャーを克服。最終戦ブラジルGP予選4位、スタート後にスピン、あわや事故リタイアのピンチを脱して6位。アロンソが2位に留まり2点僅差で辛くも逃げきった。
 そして2013年のV4は、アジアラウンド最後の第16戦インドGP。今季7回目のPPから2周目にピットイン、スピード勝負の戦略で17位から次々にオーバーテイクし6連勝、10勝目。速さはもちろん強さを見せつけた4連覇レースだった。

 これはレッドブル・チームとして初めての2冠同時決定で、ウェバーを含めたチーム総合力の結実でもある。2005年に誕生した飲料メーカー・チームのルーツをたどると、スチュワートを買収したジャガーが母体で当時は“Cクラス”の存在だった。勝つどころか入賞を目指す意欲も感じられず、最高成績ランク7位で撤退した。

 そんな弱体チームがレッドブルの出発点だということが、最近の成功によって忘れられようとしている。2005年7位、2006年7位、2007年5位、2008年7位、この初期4シーズンの成績はジャガー時代とほぼ同じ、しかし2009年から急上昇して2位へ(ホンダ撤退後ブラウンGPが王者になった年)。“負け犬根性”がじょじょに払拭されていった4シーズンを経て、何が変わったのか? この2009年にベッテルが、ジュニアチーム格のトロロッソから抜擢されてチーム入りした。だがキャリアわずか2年半の新鋭が一人でチーム改造を手がけたわけではない。

 A・ニューウェイさんがマクラーレンからこの新興チームに移籍したのは2005年のこと。今になって明かされたが、当時彼にはフェラーリから丁重な“オファー”があった。だが名門チームに行くことは、単身赴任では済まない。かつて大物エンジニアのJ・バーナードが雇われた際、彼は英国に居てイタリアのチームの“遠隔操作”を試みたが、これは機能しなかった。ニューウェイさんがこの事例を参考にしたかどうかは分からないが、結局彼は家族との生活、子供の教育などを優先し、名門に行く道を進まなかった。

 彼のF1での成功は、1992から1997年のウイリアムズ時代に、5回のコンストラクターズ・タイトルを獲得したところまでさかのぼるが、その後移籍したマクラーレンでも1998年に1回コンストラクターズ・タイトルを獲得し、「チャンピオン・エンジニア」と呼ばれたようになったことは、ご存知の方も多いだろう。

 彼が2004年シーズンをもってマクラーレンを離脱した理由はいろいろ言われているが、当時の代表R・デニス率いるマクラーレンのチーム組織がどんどん“大型化”し、スーパースポーツカー生産にも熱中していくなかで、──エンジニアとして“原点回帰”したかった彼は、肥大化する組織がいやになって動いたと僕は解釈している。

 彼はいまも製図版に手書きで設計プランを描き、直属のスタッフに指示を下すスタイルは有名だが、その仕事ぶりは一切の妥協を認めない「頑固さ」で知られ、普段サーキットで見せる穏やかな表情からは想像できないほど。そうした個性の強いニューウェイさんが、いちコンストラクターから大メーカー化するマクラーレンで、次第に居場所を失っていったことは想像に難くない。

 そんなニューウェイさんが2005年に、コペルニクス的転回で新興レッドブルでエンジニア・リーダーとして加わり、ゼロから『チーム起こし』に挑戦する道にターンした。いわば大動脈ハイウェイから狭い脇道に踏み込むようなものだ。

 2005年から2008年の間にその脇道は舗装され、車線も広がり、付帯設備も整い、2009年に『ニューウェイ・ハイウェイ』は目的地<チャンピオン>に18.5ポイントまで迫った。そして翌2010年には“全線開通”し、若きベッテルとともに4本の新しいハイウェイを「F1ロードマップ」上に作り上げたのである。

 ベッテル4冠、ニューウェイ10冠、続くアブダビGPで彼らは7連勝をおさめた。これは2004年のM・シューマッハ(フェラーリ)に並ぶタイ記録だ。因みに1952〜1953年にはA・アスカリ(フェラーリ)がF1史上最多の9連勝を残しているが、どちらも名門フェラーリで不動のエースとして君臨して達成した大記録だ。その記録に結成8年のレッドブル・ルノーで26歳のベッテルが、60年ぶりとなる最多連勝記録に挑戦しようとしているのである。

 残るは2レースは第18戦アメリカGPと最終戦ブラジルGP。半世紀を超える新たな彼らの9連勝チャレンジが、2013年F1シーズンのグランドフィナーレになるか。新時代を目撃するために行ってきます。

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