Race Eye
2013シーズンを締めくくる北南米2連戦、ベッテルの偉業を目に焼き付けた!
2013.12.04

 今シーズンの最後に、タイトル決定後のアメリカGPとブラジルGPに行く主たる目的は、ベッテルの9連勝をこの目で見ておきたかったから。52〜53年にアルベルト・アスカリさんが残した大記録に、60年ぶりに挑戦するドライバーの出現。時代性が全く異なるとは言え世紀の大偉業であり、今のベッテルがどういうレースで記録に並ぶか、この目に焼き付けておきたかった。

 テキサス州オースティンは初めて。以前のインディアナポリスとは街の景色、様子、雰囲気がかなり異なる。COTAのコースを歩いて見て回り、その高低差を活かしたレイアウトに「アメリカ最高のロードコース」が実感できた。

 ベッテルは、朝霧の金曜日のFP1を21周、18位だったが黙々とロングランに取り組んでいた。これは2014年のための何らかのテストで、基礎部品などの走行確認をするために、定速ペースでデータ収集に努めているように映った。古い表現だが、レッドブルは「走る実験室」とも言われるように、彼はテストドライバーに徹していた。目前のレースだけではなく、もっと先を見据えた行動だ。

 午後のFP2からは、本来のプログラムに専念。35周して1位に躍り出た。「ノープロブレム!」、彼らはそのまま土曜日のFP3も、続く予選も、決勝レースの56周も順調に駆け抜け、8連勝。レースに“楽勝”などないというのが僕の持論だが、このアメリカGPだけはそれに近い内容で、ベッテルはいかにも楽しそうに走っていた。

 さて、オースティンからサンパウロへの移動はきつい旅になった。
関係者はチャーター便かプライベートジェットでも、こちらはそうはいかない。いったんダラスまで戻ってそこからマイアミに向かい、国際線のブラジル行きに乗り込む、複雑で長い旅程だ(ロスト・バゲッジにならずほっとした…)。

 サンパウロには11月20日・水曜日に到着、初めて知ったが、この日は「黒人意識の日」でサンパウロ州は祭日。市内レンタカー営業所は休みで、空港ピックアップに変更を強いられた。毎年大渋滞になる市内はガラガラで、GPSをオーダーしておいたこともあり、ホテルには1時間程度で着いた。

 市内の街並みにはXマスのデコレーションが目立つが、この日は33℃の猛暑! 涼しめのオースティンから来た身にはつらかった。ところがこの暑さは木曜日までで、金曜日からは雨模様の日々に一変、青空はブラジルGP後の火曜日まで待たされることになった。

 レース期間中FP1からすべての走行時間帯がウェットになったのは珍しく、ブラジルGPは記憶にないレース・コンディションになった。ドライ・タイヤは全く使えず、いっさいそのデータがないままの決勝レース。これは全員同じ条件、さあベッテルとレッドブルはこの難しい状況でどう戦うのか?

 ウェット続きをチャンスととらえたのはフェラーリのアロンソだった。マシンの絶対的なパフォーマンスのハンデが減り、人間力(ドライビングやチーム判断、ピットワークなど)のファクターでカバーしなければならない。実際、濡れた路面でアロンソはラインを変え、いろいろトライし、15戦ぶりに予選3位、2列目に上がってきた。ベッテルにすれば予選2位のロズベルグよりも嫌な相手が背後に迫り、9連勝への試練となった……。

 そのプレッシャーは彼自身ではなく、チーム側に強くあったのかもしれない。またウェバーの引退レースも重なり、それがダブル・プレッシャーになっていたという見方もできるだろう。

 決勝レース時の降水確率は60%、だが午後2時のスタート時点では雨がなく、グリッド上にスタンバイされたウェットもインターも使われないままだった。余談だが、ここインテルラゴス・サーキットは、ピットとグリッドの間に“落差”があってウオールで仕切られている。だから、グリッドに器材を運び入れ、またピットに戻る作業は大変な重労働で、階段を使って機材を“運搬”するメカニックたちは、いつもと違う動きを強いられる。

 そうした状況やプレッシャーからの焦りなどで、怖れていたミス、レッドブルらしからぬ混乱が起きたのは47周目だった。コース上でハミルトンとボッタスが接触、それを見て各チームはセーフティーカー導入の事態を予測し、2回目ピットストップを判断した。折しも中盤からすでに霧雨も降り出しており、ベッテルも何度かラインを狂わせるミス、タイムロスもあった。

 僕はTV仕事がなかったので、レース中に何度か表に出て、霧雨の降り方や流れる雨雲の位置、風向きなどをチェックしていたが、ピットウオールにいるチームメンバーは視野が限られ、周囲の状況がつかみにくい状況が続いていた。そうしたなかで、ピットインに備えタイヤ交換の準備をしていたメカニックが、ベッテル用タイヤとウェバー用タイヤを間違えるミスを犯してしまう。そのため、先にピットインしたベッテルは、マシンを止めたままおよそ10秒ほど待たされる事態を招く。後ろで“順番待ち”していたウェバーも約4秒ほど待たされるタイムロス。その期に乗じて3位につけていたアロンソが、ここぞとばかりにペースアップ。48周目には1位ベッテルに7.012秒、2位ウェバーに0.605秒まで迫った。

 このピンチにベッテルは2013年最後のラストスパートをかけた。ウェバーもF1人生最後のスパート。密度が高い3者による攻防戦が、TV画面よりも実際には小雨に近い天候のなかで続いた。

 レース結果は、ベッテルの独走で終わり、2位にもウェバーが入り「またレッドブルの1−2かよ!」と深夜のTV中継をご覧になり思われた方も多いかもしれない。だが9連勝は決して“楽勝”ではなかった。何度か小さなミスを犯しそうになりながらも、1−2でフィニッシュしたベッテルとウェバー、それを誘った3位アロンソ、最終戦最後の20ラップは見ごたえあるものであった。

──「今年もブラジルまで来てよかった」、日曜深夜雨上がりの道をホテルに帰る時に思った。
勝つべくして勝ったベッテル、来季開幕戦に10連勝がかかる。
やってもらおうではないか! 

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