Race Eye
開幕2戦で見えた全11チームの現状と課題をチェック!
2014.4.4

 開幕ラウンドの2戦、3月のオーストラリアGPとマレーシアGPツアーを終え、日焼けして帰ってきたら成田空港まわりは桜が満開だった。毎日30℃を超える日々を過ごしてきたせいかブルブルッと“花冷え”を感じた。今回は開幕2戦で見えた全11チームの現状と課題チェックしておこう。

【メルセデス】
 話題となっている新14年パワーユニット(PU)生音が、コースで最も力強く響いているのがこのチーム。常用1万2000回転でのパワーは800馬力以上と推定され、さらにフラットなビッグ・トルク特性とあいまって8速ギア比設定にマッチ。安定した挙動を示すW05シャシーはどのコーナーでもスムーズ。

雨がらみの予選で連続PPが証明するように、ハミルトンは今季のドライビングを修正し、完全にマスター。第2戦の決勝レース、第1スティントでロズベルグよりもタイヤに優しい走りを見せ、わずか2周でぶっちぎるとスイスイと独走。これはニコにとって内心ショック(!)、個人的には開幕前から今後の二人の関係が相当変化すると予想していたが、もうそうなりつつある。

現場を仕切るP・ロウ監督は100Kgの燃料をすべて使いきるフルシステム・パワーで飛ばし、今後のレッドブルの挽回に対して序盤戦で貯金を稼ぐ方針だ。つまりメルセデス・チームは今がピーク、それを覚悟し、序盤に集中する14年戦略で臨んでいる。

【マクラーレン】
 開幕戦2&3位はラッキーな結果だと、技術陣は冷静に受けとめている。
課題はいくつもある。まずダウンフォース不足、フロントウイング&フロアのアップデートが緊急課題。次にメルセデスPU勢のなかで来年ホンダとなるだけに、その最新ノウハウ情報が不十分でバトンも嘆いている。第2戦予選Q3で一人インターミディエイト使用する“ギャンブル”に出たのも、真っ向勝負では敵わぬと見たからだった。

新人のマグヌッセンは初戦2位、02年のミナルディで5位入賞したウェバーと同じく強運によるリザルト。そつがないケビンのドライビングは父親以上と評価するが、彼の真価はもう少し見てからにしたい。

【フェラーリ】
 ドライバー力によって40点をゲット、はっきりそう断言する。PUは重くてMGU・K(ブレーキ・バイ・ワイヤ)回生能力ももう一つ、パワー不足が響きアロンソでもオーバーテイクが難しいマシンだ。キミは第2戦でようやくセットアップの方向性を見つけられたがマグヌッセンにぶつけられてご破算に。まだ完全に乗れてはいない状態と見てとれる。

難点はさらにタイヤ・マッチング状態で、硬めスペックだとリアの摩耗が感じられるので今後はソフトタイヤを2種供給されるGPで頑張りたい。

走行音から判断してフェラーリだけが独自にモーターを駆使、ターボ過給時やシフトダウン時(ブリッピングという)に“シュシュッ”と鳴るので耳につく。これは“燃料セーブ”の切り札となる可能性があるので、中盤戦以降に注目したい。現在F14Tシャシー・モノコック軽量化を緊急開発中なので、中国GPまでにはギアボックスを含め投入できるだろう。これによって0.5秒アップは確実、それを二人とも切望している。

【ウイリアムズ】
「アンタは速くないから(譲れ)」──。
そう無線で指示されたら、感情的なフェリッペが刃向う気持ちも分からないわけではない。セパンで起きたこの出来事、これをP・シモンズさんはどうとらえるか、これからの問題になるだろう。昔のフランク代表ならば即厳重注意、怒鳴り散らしたはず。オフ・テストは最速でシーズンを迎えただけに、開幕ラウンドで表彰台チャンスを逃がしたのは痛すぎる。

秘められたFW36の速さは“アンダーウェイト”の賜物で、軽量化によるバラストウェイトを最適設置できていて、カーバランスは今トップレベル。ドラッグが小さくて最高速抜群、しかし雨ではダウンフォースが少ないためにタイヤ発熱に苦労し、予選最高9位からの苦戦を強いられたが。極秘情報によると100Kg以下の燃料でスタート可能でこれが大きな強みになっている。

【フォースインディア】
 ヒュルケンベルグ・ファンの皆さん、お待たせしました。今いちばん僕が“乗れている”と思うドライバーです。リアのスライド・コントロールは絶品、2010年のブラジルGPで雨がらみのなか初PPを獲得したレースを思い出させる。

VJM07の特長は、一目で解るように冷却対策に配慮がなされている点、それによりメルセデスPUのパワー&トルクを“ワークス”なみに引き出す。事実上NO2待遇を受けているが、どうやら第2戦から同じ最新ソフトウェアが与えられている(らしい)。彼がコンスタントに上位入賞してくれればワークスチームにとっては、敵の得点力を阻んでくれるから御の字。名門マクラーレンとウイリアムズにとって「インドの力」はとても悩ましい存在だ。

【レッドブル】
 GPS測定データ情報をベースに走行分析したところ、RB10がコーナー最速マシンであることが初戦後に判明。これにメルセデスは真っ青になり、ルノーPUがトラブルの“モグラたたき”をしているうちに逃げなくてはと警戒心を強めている。

コースサイドで見るRB10は昨年並みのコーナー速度を発揮している。禁じられたはずの「排気オフ・ブローイング」を何らかの方法で取り入れているのではないか。第2戦からはお得意の“前傾姿勢セット”も強まってセクター2では最速、ダイナミック・ダウンフォースが戻って来た。

しかし今年もストレートは苦手、ルノーPUエネルギー効率が約30%劣る分コーナリングタイムの速さを直線で全部吐き出してしまっている。一刻も早くルノー・スポールに車載状態でベンチ上での性能を発揮して……、とベッテルは首を長くして待っている。

新入りリカルドの実力は前からの予想どおりだ。ベッテルはセパン1周目にあそこで抜かれ、意表を突かれた。なお「流量計問題」に関しては技術というよりも政治がらみの事柄であり、これには使用燃料メーカーとFIAセンサー調整との“事前関係”に深く起因していると僕は受けとめている。14日にFIAがどう判断するのか、白黒はっきりさせないことには今後参戦するメーカーも興味しんしんだろう。

【トロロッソ】
 レッドブル傘下チームであるから今、本社が危機に瀕しているだけに子会社としては“実験台”のミッションを忠実に全うしている。2戦で8,9,10位入賞は大健闘、特に新人クビアト無欲の走りが先輩ベルニュにいい刺激をもたらしている(以下略)。

【ザウバー】
 フェラーリ系チームのミッションもまたトロロッソと同じ。本家のための実験台であり、ソフトウェア開発やモノコック軽量化効果やギアボックス耐久性などを試しているところ。

スーティルとグティエレスは本来ドライビング・タッチが14年向きでリア・コントロール、タイヤ・マネージメントもできる能力がある。トロロッソ同様の立場にあるチームだがこの状況を打破するには資金力が心配、モニシャさんも苦労している。

【ロータス】
 レッドブルRB10に匹敵する高いE22シャシー能力がコーナリングからは十分に感じられる。それはグロジャン、マルドナルドともにそうだ。しかしながらチーム力が昨年よりさらにダウン気味、いまやスタッフ300人以下規模になってしまいザウバーと同レベルに。そこまで人件費がカットされて、ウイリアムズに流出しているのが中盤戦を前にとても気がかりだ。

【ケータハム】
 小林可夢偉がいなかったら最下位脱出はかなわなかった──。
ほとんどノーテスト、全くノーセッティングでマルシアを出し抜き、中間チームに食らいつくエースの戦いぶりに、チームメンバーも触発されつつある。

オーナーにF1への情熱を再びかき立てるような地元マレーシアGPでの逞しいレースが、底を突きつつある財政状態だがいい“カンフル剤”になるだろう。トヨタTMGの風洞開発に資金を払える余裕などないのにぎりぎりの投資をし、初入賞をめざしてランク10位を目指す。

「道のりは遠くて長いです」──。
夜のセパンでエースは表情をこわばらせた。わざわざマレーシアまで応援に駆け付けたファンは多く、彼らの前でザウバー時代と一味違うレースを実行。他チーム関係者に存在をアピールした彼は昨年WECフェラーリ経験を積み、F1操縦法もレースへの取り組み方もなにもかもが変わった。相棒エリクソンは現在ひたすらその小林から学んでいる最中、評価はまだできない。

【マルシア】
 ビアンキよりもチルトンがコース上で元気なのはなぜなのか。昨年序盤とは立場が逆転しているような走りを見せる。現状はザウバーともどもさらに基礎的な開発プログラムをフェラーリのために担当中、それによってPUリース料金を考慮してもらい“延命対策”を模索か。ソチでのロシアGPまでなんとかサバイバル(生き残る)ことが最大目標。彼らだけでなくかなりのチームが内情逼迫していることを知ったうえで、中位バトルにも目を向けてもらいたい。

08年スペインGPを最後にシーズン中途で消えた「スーパー・アグリ」の二の舞は避けたいと、いくつものチームが一所懸命に戦っている──。

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