Race Eye
ハミルトン対ロズベルグのマッチゲーム。中盤戦からは「心理戦」に突入!
2014.5.22

 今のハミルトンを見ていると10年前の2004年のシューマッハ(フェラーリ)、22年前の1992年のマンセル(ウイリアムズ・ルノー)を思い出さずにはいられない──。

 ベストマシンを得たドライバーは「負ける気がしない」と自信に満ち、チーム・パワーのすべてを一身に引き寄せる。シューマッハもマンセルも開幕5連勝で進軍を続け、ライバル(とチームメイト)を序盤で振り切るとチャンピオンシップを夏の終わりまでに決めてしまった。ハミルトンには今、その可能性が十分にある。

 最速マシンを共有するチームメイトのロズベルグを速さで圧倒、エンジニアたちも彼の本能的なコントロールを解析すれば、“NO.1ドライバー”を意識せざるを得ない。首脳陣が「二人はジョイント・ナンバーワン待遇」といくらアピールしても、データで証明される事実は重い。ロズベルグはシューマッハとともに過ごした時代とは違う危機感を持ち、同年代85年生まれのハミルトンを、それこそ叩き潰すような覚悟で中盤戦に向かわねばならない。

 初戦オーストラリアGPでは、メルセデスのパワーユニット(PU)のトラブルのせいでリタイアしたハミルトン。PPを奪いながら早々にピットに消え、予選3位のロズベルグに“不戦勝”のかたちで25点を与えてしまった。

 そして第2戦マレーシアGPから第5戦スペインGPまで“4連勝”。シューマッハとマンセルにはひとつ及ばないが、開幕次戦からのこの連勝記録に、心をリセットした彼の強さがはっきりと浮き彫りになった。

 ノーポイントからのスタートと言えば、思い出すのが88年のセナ(マクラーレン・ホンダ)だ。開幕戦のブラジルGPでプロストを退けPPを奪いながらギア・トラブルを抱え、スペアカーに乗り移りスタートしたものの後に失格。プロストが勝利し、セナは1勝=9点(当時)のハンデを負ったところから序盤戦にたちむかっていった。その姿が今季のハミルトンとダブって見える。

 ハミルトンが「セナ的」に見えるとすれば、ライバルのロズベルグは「プロスト的」に対抗する手段をとるべきだろう。実際、バーレーンGPとスペインGPにおいて彼は、最終スティントに異なるタイヤ・スペックを履く戦略に賭けた。裏をかくアイデアとしてはいいが、こういう手段を取らざるを得ないところに「速さでかなわない…」と認めざるをえないロズベルグの心理状態が垣間見えた。受けて立ったハミルトンはピンチを速さで切り抜け、連勝記録を伸ばした。

 打つ手がない……。ロズベルグにすれば完敗。88年セナに仕掛けるためにありとあらゆる手段を講じたプロストのごとく、チームメイトとしてこれからどういう“アイデア”をひねるのか。

 二人の「心理ゲーム」がメルセデス主軸の2014年中盤戦、これから始まっていく。たぶんニコから笑顔が消え、ハミルトンは逆に薄ら笑いを浮かべるときが増えるだろう。インタビューなどに二人の極限心理が現れるはずだ。2014年は1対1のマッチゲーム、ニコ・ロズベルグに不退転の奮起を望む──。

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