Race Eye
ホンダF1に警鐘が鳴り響いたカナダGP
2015.06.11

悲しき「ホンダ・マクラーレン」──。
第7戦カナダGP、遂に二度目の2台全滅リタイア完敗。完走さえ不可能な“走れぬ実験室”状態は60年代・第一期ホンダ時代より深刻な結果であり、マクラーレン・チームにとっては前代未聞の緊急事態だ。警鐘が鳴り響いた。

80年代からのR・デニス体制で5社のエンジンが使われてきた。わずか1年で終わった94年マクラーレン・プジョーも3戦目には表彰台3位を得ている(セナが没したサンマリノGP)。今季これまで8位入賞が唯一の戦果、くらべるまでもない・・・。

今年7戦×2台の14戦完走率は最下位のマノー以下。スタートラインにつけないDNSが2回(ワースト)、リタイアが6回(ワースト)、完走6回“43%”(ワースト)。かろうじてマノーより上のランキング9位(4点)は、07年スーパーアグリ・ホンダ年間成績と同じである。

マクラーレン側はこの現実を受けとめながらつとめて楽観的な展望コメントを公式発表で続けてきた。アロンソもバトンも感情を抑えたポジティブな発言に終始、彼らは一致団結して(?)日本のパワーユニット供給メーカーに配慮してくれた(ありがたいとお礼を言おう)。

序盤戦からいまもなお“レッドブルVSルノー舌戦”が話題になっている。互いに率直に見解を述べあい、非難ギリギリの発言をしながらもお互いやるべきことに取り組み、レッドブル・ルノーは7戦すべて入賞しランク4位にいる。激しく主張しあう英仏レッドブル・ルノーと、そうはせずに共同歩調路線をとる英日マクラーレン・ホンダ(いまのところ対照的に映るが)。

6月に入り7戦過ぎた時点で不安がしだいに広がりつつある。もしこのまま戦果が上がらずに進んでいくと、マクラーレン・チーム内部(大株主の中東投資会社やM・オジェ他)の間でしだいに論争が起き始め、屋台骨が揺らぐことになりかねない。筆頭株主ではないR・デニスにとってはレース采配よりもこちらの方こそ一大事、マクラーレン・グループCEOなのだから・・・。

冷徹なデータを挙げよう。マクラーレン・ホンダはロータス・メルセデスより“13.9KMH”も遅く、マノー・マルシアと同レベルの鈍速だった。カナダGP予選、最高速計測地点(最終シケイン手前)の通過速度1位グロジャン340.5KMHに対しアロンソは326.6KMH、マノーのスティーブンスは324.5KMHだった。

MP4/30のエアロパッケージ、ドラッグ(空気抵抗)がロータスに著しく劣るわけはない。型落ちのマノーより圧倒的に優れているのは言うまでもない。1040m直線を全開加速するこのポイントでの速度差はアロンソにすれば“止まっているも同然”。あえてたとえるならホンダの軽でスーパーカーやベンツに抜かれるようなもの・・・。我慢できず無線で感情的なやりとりになったのも分かる。

王者たるアロンソとバトンがただ抜かれる一方のシーンは、このスポーツイベントそのものの損失だ。ミスターE、バーニーさんもこのありさまにご立腹と聞く(パドックパスがここにきて制限され、モナコにも本社首脳陣の姿は無かった)。グランプリで築いてきた“HONDAブランド力”が徐々に薄れていくような気がする。それを今、第4期関係者皆さんはどのように感じられているのだろうか。
負けても「悲しい」とか言わずに悔しがり、完走できても喜ばず、入賞くらいでは安堵せず、トラブル原因は潔く認めて戒め、“レーシング・スピリット”で挑んでいただきたい。ヨーロッパラウンドを前に再びスタートラインに立ち戻った現実をかみしめ、ここからがスタートだ。

ICEエンジン気筒内熱分布など、細部すべてにかかわる課題点は把握できたはずだ。燃費特性も、エキゾースト系も、ターボ潤滑も、プラグ関連も、アンチターボラグ制御も・・・ETC。どこから手をいれるかと言えばすべてで、PUコンポーネンツ5基制限ルールなどにとらわれず、できたモノからどしどし投入すべきだろう。

ペナルティーのグリッドダウンなど怖れることはない。今はPPから中団まで一気に下がる情況ではないのだから。ピットスタートやドライブスルーのハンデを背負うドライバーには申し訳ないが、思いきりプッシュできる新しい“タマ”を装着してやれば、二人はずっと我慢ばかりしてきた鬱憤をはらすチャンピオン・ドライビングをつらぬくだろう。完走できずに終わったとしても、そこまでの全データを徹底解析することが失敗を恐れぬ「宗一郎さん主義」の継承となる。

大胆に言わせていただくと、中盤戦は毎GPグリッド後方、ピット・スタートでもいい(開幕戦予想時点から自分は言ってきた)。抜かれるマクラーレン・ホンダではなく、抜きまくるマクラーレン・ホンダを世界中のファンは望んでいる──。

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