Race Eye
“男気”あった高速2戦(第8戦オーストリアGP〜第9戦イギリスGP)インプレッション
2015.07.13

今シーズン(全19戦)もすでに“セクター2”へと進み、個性的なコースを巡る夏ヨーロッパラウンドが続いている。ちょっと遅くなったが2戦のインプレッションを──。

第8戦オーストリアGPと第9戦イギリスGPは今季中盤の「高速コース」。どちらもハミルトンがPPを獲得、平均スピード227.501km/hと229.879 km/hに達し、昨年を上回った。2年目パワーユニット(PU)の進化がここに表れている。

予選タイムアタックでハミルトンは1万1800回転リミットまで使いまわした。メルセデスのパワーとトルクは強大かつとても“滑らか”、ドライバビリティ(応答性)も優れている。ギア変速時にマシンがブルブルっとよじれる瞬間がほとんどない。彼のステアリング・コントロール量はロズベルグとくらべても非常に小さい(修正角度など見てとれないくらい)。ものすごくデリケートな感覚センサーを秘めた今のハミルトン、『最速ドライバー』と認めるこれが理由だ。

シルバーストーンで通算46回目PP、1位M・シューマッハ68回、2位A・セナ65回に次ぐ歴代3位が話題になった。ハミルトンは157戦目でセナは通算161戦の“生涯記録”、こう並べるといかに偉大な65回かお分かりだろう。とはいえハミルトンが今の実力を維持すれば今季PP“50回”突破も可能、そういう視点で後半戦の予選を見ることをお勧めする。

旧エステルライヒリンク時代は屈指の超高速コース、オーストリアGPは高低差のある“ジェットコースター的”なロング・レイアウトだった。ご存知シルバーストーンも2010年に現在のレイアウトになる以前は「名うての超高速舞台」、元滑走路をつないだ直線とコーナーのミックスが難易度をアピール。両オールドコースはどちらも“男気”を試される場であった。

今年空席が目立ったレッドブルリンク。11年ぶり復活の昨年は日曜9万5000人満員(渋滞にはまいった…)、週末を通じてのべ24万人も集まったのはレッドブルがティケット代を抑え、木曜は“無料開放”するなどファンサービスに徹したから。ところが2年目は日曜5万5000人、レッドブル・チームの不振も影響しただろうが中止されたドイツGPの代わりにドイツから来ると思われた客層が少なかった(ようだ)。

一方イギリスGPは久々に日曜14万人と超満員、それにはわけがある。リーズナブルなティケット価格を設定し10歳以下は無料、観戦しやすいエリアに仮設スタンドを増設した。もう一つは毎年同時期開催のウインブルドン・テニス大会の日程が変わり、決勝日に試合が無かった。F1よりも歴史がある同大会は夏を告げる英国最大スポーツイベント、その入場料はF1パドッククラブ以上だ(センターコート決勝戦)。余談だがだいぶ前にあのB・エクレストン氏がこの大会を“買収”しようと動き、そのころF1にはボリス・ベッカー(現ジョコビッチ選手のコーチ)がよく来ていた。

国民的行事ウインブルドン大会第一週の合間をぬって行われた今年、イギリスGPは日程調整に恵まれた。そして“スポーツナショナリズム意識”が強い彼らはハミルトン応援にシルバーストーンに出向いたというわけ。もう一つ挙げるならばこの時期この国ではありえない好天で30度以上の夏日が続き、キャンプを楽しむ目的のアウトドア派も続々と・・・。シルバーストーンはキャンピングカー入場制限があるから水曜、木曜までに入り場所を確保。金曜から周囲のパーキングがいっぱいになったのは天気のおかげ・・・。

先日行われた「GPDAファン・アンケート調査」によると人気ドライバー1位ライコネン、2位アロンソ、3位バトンだったそうだ。某誌が毎年発表する「チーム代表が選ぶベストドライバー」では1位ハミルトン、2位ベッテル、3位アロンソ。どちらにもアロンソはノミネートされた。

オーストリアGPで人気1位ライコネンとそのアロンソが後方集団内でいきなり接触リタイア。イギリスGPでは多重事故のあおりでアロンソとバトンが接触、母国戦1周もできずにバトンは終わった。どのプロスポーツにも“スタープレーヤー”が敗退する番狂わせはあるけれど、チャンピオンがいないも同然の試合が続くと“興ざめ感”はぬぐえない──。

2戦とも完走14台と13台、開幕オーストラリアGPの11台に次ぐサバイバルレースとなった。2年目PUシーズンますます快調のメルセデス勢に対し、ホンダとルノー勢は非信頼性問題を解決できずPU格差は縮まるどころか広がる一方の展開である。

オーストリアGPではマクラーレン勢が“25グリッドダウン×2”、前代未聞のペナルティーにおちいった。しかしこれは14年度から決まっていたルールである。昨年レッドブルもロータスも従い、その時点で騒ぎにはならなかった。だがこれを政治的な問題に広げ、「分かりにくい規定」だとか「不公平な重すぎるハンデ」だと喧伝し、規則を甘い方向に変えさせるキャンペーンを展開したのはいかがなものか。

ストラテジーグループに属するマクラーレンだから、王者アロンソとバトンが恥ずべき“50グリッドダウン”だから規則を変えるのか。ロータスやマルドナルドだと“問題”にはならないのか。ルールは公平に適用されるべきで、誰もが従わねばならない「大原則」がこれでいいのだろうか・・・。

朝令暮改が最近目立つ『世界モータースポーツ評議会』は7月10日、PUペナルティーに関して複雑すぎるから最大罰を“グリッド最後尾”まで、と改訂した。また新規参入メーカーの場合、初年度は“4プラス1基”の交換使用を認可した。ホンダ陣営側は「歓迎します」という態度でいるが見方を変えれば、これはお情けをちょうだいする屈辱ではないだろうか──。

データは示す。今年9レース総周回数は564ラップ、バトンは355周(62.9%)でアロンソは294周(52.1%)。完走できたのは二人18戦で合わせて7回、これはPU初年度のマルシア・フェラーリやケータハム・ルノー以下である。半世紀に及ぶHONDA・F1活動史上、我々は未曾有の苦戦をいま目撃させられている。60年代第1期活動に関して後に関係者の方々からうかがい、第2期に現場取材を始めていままで見てきたひとりとしては、「いま以上これ以上にがんばってください」と申し上げるほかない──。

今月末に第10戦ハンガリーGP、来月末に第11戦ベルギーGP、その間に時間はある。先月から新たに“1気筒エンジン研究”を続け、燃焼噴射系など完全に見直したいわば「新PU」開発を進めていると聞く。許されたトークン項目をフル活用したニューバージョンを作り上げ、実走テストはできずともダイナモ実験を徹底し、実戦投入まですみやかに進める・・・。

マクラーレン・チーム、アロンソ、バトンばかりか内外のファンは待ち望んでいる。HONDAはいまこそ総力を傾注しこの危機を打破しなければならない。宗一郎さんならそう『檄』をとばすことだろう。

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